耐震性に優れたガルバリウム鋼板のメリットとデメリット

ガルバリウム (Galvalume) 鋼板は、1972年に米国のベスレヘム・スチール社が開発した商品です。鋼板にアルミニウムと亜鉛、それにケイ素の合金メッキを施した商品の名称です。日本国内ではガルバと略称されることもあります。
ガルバリウム鋼板は建材として外壁、屋根に使われています。錆びにくく、軽くて丈夫、耐用年数が長いということで脚光を浴びています。軽くて強固な特徴は耐震性にも優れているということです。ガルバリウム鋼板の芯になっているのは鉄に炭素を0.04%~2%含有した鋼板と呼ばれる鉄の板です。
普通、鋼板は錆びるのですが、何故、ガルバリウム鋼板が錆びにくいのかを説明します。ガルバリウム鋼板に施されるメッキの組成はアルミニウム (Al) 55%+亜鉛(Zn)43.4%+ケイ素 (Si) 1.6%の合金です。鋼板の上のメッキ層に含まれる亜鉛 (Zn) が鉄(Fe) よりもイオン化しやすく、水分が多い腐食環境下でFeよりも先にZnが溶けだします。原板であるFe(鋼板)の腐食を防止しているのです。
ガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウム鋼板の最大の特徴は、金属にもかかわらず錆びにくくて長持ち、そして軽いことです。その軽さと、丈夫さが家に機械的負担をかけないことになるのです。特に大地震に遭遇した時などに顕著に現れます。
ガルバリウム鋼板の耐用年数の目安になりますが、開発メーカーであるベツレヘムスチール社の実験によると、めっき皮膜寿命は、塩害地域で約15年、工業都市や田園地帯で約25年以上との結果が出ています。しかし、世界中で使うと、使われる環境も様々です。思いもよらぬアクシデントがガルバリウム鋼板の寿命を縮めることもあります(最後の<まとめ>を参照)。一般的に、ガルバリウム鋼板の特徴は次のようになります。
ガルバリウム鋼板の利点
・見た目がスマートで綺麗である
・軽くて錆びにくく(トタン板の数倍以上)、耐用年数がながい
・軽くて丈夫なので、耐震性建材でもある
・耐食性はステンレス鋼に劣るが、価格は安い
欠点
・施工費、メンテナンスには特殊技術が要るため費用が高い
・薄くて断熱機能がないので、外部の熱、冷気が部屋に伝わりやすい
・錆びにくい建材でありるが、条件によって”赤錆び”、”白錆び”、”もらい錆び”が発生する
・異なる金属との接触による腐食(電食という)、木材との接触腐食が生じる場合がある
ガルバリウム鋼板の主な用途
ガルバリウム鋼板は高い防食性を活かして、建物の外壁や屋根の材料、あるいは雨樋(あまとい)、ベランダまわりなどの各種建築材料として近年使用が増加しています。同じ耐食鋼材として広く使用されているステンレス鋼板に比べて購入単価が大幅に安いことから、材料選定切り替えの動きがあります。
屋外向け塗装鋼板の母材としても、幅広く用いられています。メッキ表面にさらに塗装を行うことで、より高度な耐食性と追加機能を付けています。2009年(平成21年)に架け替えられた阪神甲子園球場の4代目銀傘(ぎんさん)もガルバリウム鋼板です。
耐震性に優れたガルバリウム鋼板製の建材
筆者は熊本北部に住んでいます。私事ながら2015年12月に平屋の一戸建てを購入しました。周辺には昔ながらの立派な屋根瓦の家がたくさんあります。そして、今年(2016年)、熊本大震災の経験です。新しかったこともあり、自宅の被害はありませんでした。翌朝、あたりを歩いたのですが、立派な家の屋根瓦がいたるところで落ちていました。反対に最近の家、ガルバリウム製の屋根を葺いた家は、まったく被害がありません。阪神大震災以降、家を建てる時は軽くて丈夫な建材を使うべし、という工法は間違いのないところです。そういう意味ではガルバリウム鋼板の効果は素晴らしいものだと思います。
しかし、素晴らしい性能をもつガルバリウム鋼板もパーフェクトではありません。錆びにくいと言われるメッキ表面に何らかの要因で傷が付き、赤錆びや白錆びに浸食されていくことがあります。子供が遊んでいる時に硬いものを当ててメッキを傷付けることもあります。
特徴のところに少し書きましたが、ガルバリウム鋼板に異質の金属が触れることによって、錆を誘発することがあります。これを電食(異種金属接触腐食)と言います。例えば、ガルバリウム鋼板に南京錠の真鍮部分が接触していても起こる可能性があります。木材との接触腐食もあります。これは木材の中に含まれる木酢液という酢酸の一種がガルバリウム鋼板を腐食させてしまうのです。時々は家の周りを確認して、表面に傷のようなものがあれば、はやく専門家に観てもらいましょう