味のあるモルタル壁で理想の家作り

モルタル(mortar)とは、砂とセメントと水とを練り混ぜて作る建築材料です。普通、セメントと砂を重量比にして1:2 ~1:3の割合にします。ペースト状で塗りやすく、仕上材や目地材、床や壁、梁(はり)など、構造物の調整などに使われます。
かつては日本住宅の外壁材として広く使用されました。しかし、工程が複雑、施工日数が20日前後かかりコスト高であるのと、施工後に亀裂が入りやすいという欠点があります。そのため、大手ハウスメーカーは、標準工法としてモルタル壁の採用を少なくしてきました。反対にサイディングやガルバリウム、タイルなどを標準工法とするハウスメーカーが増えたのです。
モルタルにクラックが生じやすいお話をしましたが、現在ではその教訓から、クラックが発生し難い工法が施されています。モルタルは二層塗りが標準工法ですが、クラック防止のためにナイロンネットを練りこみます。角にはクラック防止用の下地を入れます。更にモルタルが乾いたのちに、漆喰や樹脂塗装を二回以上塗り、モルタル材を保護しています。
目次
モルタルの特徴
モルタルを外壁に用いたとして、その特徴をお話しいたします。モルタル壁はサイディングと違い、左官さんが施工する塗り壁です。サイディングはパネル状の素材を貼っていくので、外壁としての全体形状に多少の制約があります。しかし、モルタルは塗り壁ですから、どんな形のものでも自由に塗ることができます。また、モルタル壁の見た目は、硬さが無く、自然で優しい風合いがあります。特徴は次のようになります。
モルタルのメリット
・表面の質感が良く味わいがある
・デザインの自由性があり意匠性に優れている
・サイディングのような繋ぎ目がない
・金属の外壁材のように熱くならない
モルタルのデメリット
・工程が複雑でサイディング工法に比べて少しコストが高い
・ヒビ割(クラック)れが発生しやすい
・汚れが目立ちやすい
主な用途
モルタルが使われるのは住宅の外壁ばかりではありません。むしろ、それ以外の利用の方が多いのです。特徴にも書きましたが、モルタルは左官さんの塗り工法です。下地の凹凸や塗る範囲の形に捕らわれることなく、自由に塗ることができます。この自由度がモルタルの用途を広げています。すべてを記述できませんが、よく利用されるものを下記に示します。
タイル仕上げの下地
タイルを貼る時の接着を兼ねた下地として利用します。
勾配の調整
床に水勾配が必要な時、あるいは排水溝の勾配調整が要る時、モルタル材を利用します。
空洞埋め・目地(めじ)材
ブロック積みの空洞埋め、あるいは目地材として利用します。
コンクリートやブロック面などの上塗り
内部のコンクリート面やブロック面の壁に上塗りとして使用います。この上にクロスを貼ったり、吹付け、ペンキなどを塗って仕上げます。
ベランダの防水仕上げ
ベランダの施工では、モルタルに防水材を入れて防水仕上げにする。
隙間(すきま)埋め
コンクリートの壁にアルミやスチールのサッシを取り付けたときの隙間埋めに利用します。
土面の養生(ようじょう)吹付け
山の切り土面(どめん)の養生用吹きつけに利用します。
まとめ
筆者も今回の記事を書くまで、モルタルについて細かく調べたことはありませんでした。モルタルと言えば家の外壁と決めつけていたものです。確かに建築関係に従事していないと、それ以外の使い方と言ってもなかなかピンとこないものです。しかし、用途にも書きましたが、注意してみるとよく目にするものもあります。筆者も2015年12月に戸建を新築しました。建てる前にいろいろな展示場の家を見て回ったものです。ほとんどのモデルハウスはサイディング材を使った外壁でした。しかし、我が家の外壁はモルタルにしました。サイディングはヒビも入らないし、工期も短い利点はありましたが、現在的というか、機械的すぎて、馴染めそうにありませんでした。モルタルのクラックは、業者からも聞きましたが、最近の工法は、そのクラックも出来にくくなっているようです。10年経って状況を見て、補修が必要なら対応するつもりです。しかし、それ以上にモルタル壁が放つ落ち着きがなんとも癒されます。我が家もそろそろ2年になりますが、クラックなし、汚れもなくきれいです。